2014/09/17(水) 19:00-21:00に行われた『ラミ・ゴールドラット来日セミナー「不確実性をどう取り扱うか」』に参加してきました。
以下、講演中に取ったメモをそのまま貼り付けておきます。
イベントの募集概要(募集サイトより引用)
ゴールドラット博士の息子でもあり、
・断わりきれない提案(URO: UnRefusable Offer),
・教育のためのTOC(TOCfE: TOC for Education)、
・戦略と戦術のツリー(S&T Tree: Strategy and Tactics Tree)
の開発者でもあり、ゴールドラットグループのCEOとして世界のTOCの
知識体系を進化に大きな貢献しつづけるラミ・ゴールドラットが来日します。今回のセミナーでは、複雑で、不確実性があり、ジレンマがある現実
の中で、いかに目標を達成しつづけるか、新しい知見を公開します。「不確実性をどう取り扱うか」
ラミ・ゴールドラット ゴールドラットグループCEOラミ・ゴールドラットの強みはなんといっても「わかりやすさ」です。
ともすれば、深く哲学的なゴールドラット博士の話について
周囲から説明を求められているうちに、彼は、ゴールドラット博士が
語る論理の飛躍を埋めて、誰でもわかるようにやさしく説明する
という、とても素晴らしいスキルを鍛えられてきました。今回の洞察も、ゴールドラット博士が亡くなる直前に遺した絶筆
「マネジメントの科学」という洞察を発展させ、複雑で、
不確実性があり、ジレンマがある現実の中で、いかに目標を
達成しつづけるかについて、シンプルで実践的な方法をご紹介します。
いかにもTOCらしい実践的な方法論なので、多くの方々で
得られることは多いかと思っています。マネジメントの科学
特にマネジメントに関する3つの根本的な誤りの考察は秀逸です。
不確実性について、根本的な前提の誤りによって引き起こされる
現実の数々の問題。それをいかにシンプルに対処していくかが
明らかにされます。
不確実性をどう取り扱うか
- 不確実性、対立、複雑性に対処して結果を出す
- 現実は、不確実性なコトや、対立が多く、複雑である
- どうやって、不確実性を解消すればいいのか
- どうやって、対立を解消すればいいのか
- どうやって、複雑を解消すればいいのか
- マネジメントの根本的な3つの誤り
- [Uncertainty] 不確実性を恐れるがあまり、当たりもしない厳密な予測に従ってオペレーションをしてしまう
- [Conflicts] 対立を恐れるがあまり、受け入れがたいような妥協を残したままオペレーションをしてしまう
- 受け入れがたい = リアリティのない選択をしてしまうことを指す
- 例) 最高でも最低でもなく、その中間を選ぶ行為
- [Complexity] 恐れるがあまり、システムをサブシステムへと細分化し、部分最適の有害なオペレーションをしてしまう
- 不確実性に対応するために...
- 例) 消費財ビジネスのようなビジネス環境では、すべてのオペレーションを製品の売上げ予測に基づいて行う
- どれだけ売れるのか→どれだけ作るのか→どれだけ購入するか
- 「すべてのオペレーションは予測に基づいて行うもの」という理解はあっていますか? 「より良い予測を作ることが出来る」というのはあっていますか?
- 疑問1) 時が経てば、より多くの消費履歴を記録することができ、また、大規模データを分析できる、より優れたITシステムを手に入れている
- 疑問2) 予測精度は、上がり続けると思っている
- 例) 毎日エサを貰っている鶏は、明日もエサを貰えると思っている。こういう過去の経験に基づいて未来を予測することは、あっていますか?
- 例) 消費財ビジネスのようなビジネス環境では、すべてのオペレーションを製品の売上げ予測に基づいて行う
- なぜ予測能力は上がらないのか?
- 理由1) モノを消費する動向に、大きな変化があるから
- 消費者は、自分の好みや望みのモノを手に入れることに、ますます敏感になってきている
- ブランドや小売りでは、より幅広い品揃えを揃えようとする
- 例) スーパーはどんどん品揃えを増やしている(新製品導入が増加)
- 2009年に比べて2012年は約2倍の品揃えを行っている
- より多くのchoiceがあることがわかると、消費者はchoiceに対してより敏感になっていくことに気づきませんか?
- 予測はこれ以上正確にはなり得ない - 品揃えを例に
- 縦軸:マネジメントの注力がどのぐらいかかっているか
- 横軸:品揃え
- 品揃えが少なすぎた場合: 十分な選択肢がない、すべての顧客タイプをカバーしていない
- 品揃えが多すぎた場合: 新鮮味がない、古くなった在庫で顧客に悪印象を与える、選択肢が多すぎる
- 多い品揃え = 低い新鮮味
- 品揃えのグループ(商品グループ)の品揃えが多ければ多いほど、次の週までにリフレッシュされている可能性は著しく低くなる
- リフレッシュ: 新しい商品を得る
- リフレッシュされなくなると、在庫が古くなるし、なかなか売れない商品が増えていく
- すべての製品が等価であるわけではない
- 売上はほんの一部の製品からのみなっており、ほとんどの製品は売上になっていない
- 売上にまったく貢献していない商品(=在庫)が存在する
- 品揃えが多ければ多いほど、古い在庫が増え、お客様に悪印象を与えてしまう
- より多くの選択肢を顧客に与えると、顧客の決断が遅くなってしまう
- 品揃えの多さは、決められないほど多いと感じる問題が発生する
- TEDの動画の紹介
- How many choices did you make this week?
- CEOの意思決定は、9分以内だった
- 意思決定に1時間以上かけたものは、意思決定のウチのわずか12%だった
- 6種類のジャムの試食と24種類のジャムの試食、どちらの方が購入者が多かったか?
- 24種類のジャムは試食者は多かったが実際に購入したのは3%
- 6種類のジャムは試食者が少なかったが実際に購入したのは30%
- 401kの例)
- 選択できるファンドの数が多いほど、加入者が少なかった
- 利用できる選択肢が多いほど、株式を購入する人の確率が減った
- 4つの簡単なテクニック
- カットすること(余計なモノを省くこと)
- 具体化すること(それぞれの選択仕事の影響を具体的に感じる必要がある)
- 分類すること(選択肢が増えるより、カテゴリが増える方が対応しやすい)
- 複雑さに慣れさせること(難度を徐々にあげていく)(情報が表示される順番を、選択肢の少ないモノから多いモノへ並べるだけで効果がある)
- どのぐらいの品揃えが一番適切、最適だと思いますか?そこをあてることはできますか?
- 消費者が待てる時間はどんどん短くなっている
- 調査事例)
- 2011年、先進国から新興国までの34カ国における合計25,000人のさまざまな年齢、経歴を持った調査対象者のすべての意向について
- 飲食品、電化製品、公共サービスと言った10の異なるタイプの製品やサービスに対して、それぞれ詳細に購入動向、好み、感じたことが質問された内容
- どういった特徴なら追加料金を支払っても良いと思うか
- 即購入可能
- 一時的に購入可能
- 革新的な特徴 12%
- 先進的なサービス 11%
- カスタマイズされた特徴 9%
- その結果、ブランドや小売店は、より多くの在庫を持とうとする(消費者がすぐに買えるようにするため)
- 調査事例)
- 予測はこれ以上正確にはなり得ない - 在庫を例に
- 縦軸:マネジメントの注力がどのぐらいかかっているか
- 横軸:在庫
- 在庫が少なすぎた場合: 商品が足りていない
- 在庫が多すぎた場合: 新鮮味がない、古くなった在庫で顧客に悪印象を与える
- 消費者が新たな商品を期待している、そして、そのサイクルタイムはより短くなってきている
- サイクルタイム: 商品が正しい値段で売れる期間
- 新しい商品を導入した場合、古い商品は価格が下がる
- 新しい商品を導入した場合、すべての商品に影響を与える
- 古い商品は安いので、新しい商品にも影響を与える
- その結果、ブランドや小売りは、新製品導入ペースを上げる
- 商品が大きな値下げをしないと売れなくなった時が、サイクルタイム
- 80年代のTVのサイクルタイムは3年、現在は3ヶ月
- サイクルタイム: 商品が正しい値段で売れる期間
- 予測はこれ以上正確にはなり得ない - 新商品の導入を例に
- 縦軸:マネジメントの注力がどのぐらいかかっているか
- 横軸:新商品の導入
- 新商品の導入が少なすぎた場合: 新鮮みがない、来客数が減る、コンバージョン低下
- 新商品の導入が多すぎた場合: 大きな値引き、欠品、監理が大変
- 不確実性に対応するには
- 消費者は自分の好みや望みにより敏感になっているので、店舗はより多くの商品を持つことになる
- 消費者は待てなくなってきているので、店舗は在庫を持つことになる
- 消費者は新商品への期待を大きく持っているので、新商品を更に導入することになる
- 不確実性に確実性を押しつけると、歪みを生じさせることになる
- 直近の数字作りのために、短期的な視点で意思決定することになる
- 月末症候群: 数値目標のために頑張った結果
- 部分最適: バッチサイズの増加: 調達→生産→物流→発注→
- 対立を解消するよりも目の前の目標値に合わせるため、最適なポイントでのやりくりをし続ける
- 選択肢を多くするのか少なくするのか
- ストックを多くするのか少なくするのか
- 新商品を多くするのか少なくするのか
- 予測はこれ以上正確にはなり得ない: どの最適なポイントも一時的なモノである
- 唯一の出口は、リアリティに合わせて反応する時間をできるだけ短くすることである
- リアリティからのシグナルを把握するまでの時間
- ←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←
- 供給 流れ 需要
- →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
- リアリティからのシグナルに反応するまでの時間
- 反応に要する時間、消費のばらつき、ビジネスニーズに基づき、戦略的にバッファを持つ
- バッファを持つことで「ノイズ」にリアクションする必要がなくなる
- シグナルを読み取り、対応する時間をできるだけ短くする
- 「流れの概念」を取り入れる
- 作りすぎを防ぐ
- 部分効率や部分最適を廃止する
- 流れをバランスさせる
- 「流れの概念」を取り入れる
- 「ミステリー」を分析し、解決する
- 想定された結果との違いを明らかにする→誤りを浮き彫りにする→新たな仮説を作る→新たな実験案を考える
事例紹介)
- 宝石小売店 180店舗所有、売上10億ドル(約1,000億円)
- 店舗全体でかなりの在庫を保有
- 1日の売上は、たった50SKU(50個)のみ
- 在庫の30%は6ヶ月以上滞留している
- 100万のアクティブSKU(取り扱い商品)が存在している
- 毎年6,500製品が新製品として投入される
- 家電小売店 120店舗 売上4億ドル(約400億円)
- 6,000種類の製品を取り扱う
- 商品寿命は3~6ヶ月(商品価値の維持期間)
- 各種ファッション商品取り扱い小売店 230店舗、売上30億ドル(約3,000億円)
実際にやったこと)よく売れる商品を3つに分類した - ヘッド商品(動きが速い=補充した方が良い)
- 動きが速い商品のクライテリアを決め、カテゴリー毎に適用する
- すべての当てはまる店舗に配置する
- 実際の消費に基づいて頻繁に在庫から補充する
- 基準を決めてダイナミックバッファマネジメントを適用する
- ベリー商品(動きは分からない=店頭に陳列した方が良い)
- 店舗には、集約された「売れ筋」リストに基づいてオーダーするように推奨する
- サプライリードタイムを短くする
- テール商品(動きが遅い=一掃した方が良い)
- 動きの遅い商品のクライテリアを決め、カテゴリー毎に適用する
- 全店舗間でテール商品をローテーションさせる(テールの中で本当にテールとなるのは30%のみ)
- 完全にテール商品であると思われるモノは、頻繁に一掃する
- 想定された結果との違いを明らかにする→誤りを浮き彫りにする→新たな仮説を作る→新たな実験案を考える